静岡で働く税理士の書架より

ギャル農業　　藤田志穂　著





＜渋谷ギャルが農業に挑戦＞
「あらゆる領収書は経費で落とせる」を探していた時、偶然書棚で見つけた本です。題名を見て「何だこれ？」と惹かれました。内容は、渋谷系ギャルが農業（具体的には米作りと野菜作り）に取り組むお話です。

藤田志穂さんの名はどこかで聞いたことがあるような気がしました。元ファッション誌のモデルです。ギャル風の外見だけで「大人の社会」から疎外される偏見に憤り、「ギャルにもできる」をスローガンにマーケティング会社を設立し、様々なイベント等を企画し活躍された方です。私が名前知っているのは、おそらく何かの起業関係の本に出ていたのでしょう。


＜ミスマッチ感が面白い＞
藤田さんはマーケティング会社の活動を軌道に乗せた後、社長を退き「農業」活動へ従事します。日本の農業衰退と食料需給率の低下を憂い、若者に農業の魅力をＰＲする事が活動の目的です。ここで面白いのは、「農作業」に従事する際も「ギャル」の外観は一切崩さないのです。メイクもしっかり決めておしゃれな長靴を履き、渋谷の街を往来できる「いけてる」格好で農作業に従事します。（雰囲気はこちらをご覧下さい）

→藤田志穂さんのHP。（雰囲気はこちらをご覧下さい）


＜若者の目を農業へ向けさせる＞
藤田さんは農家の協力を仰ぎ、自らも農作業を行います。しかし、どっぷり農業に漬かる訳ではなく、基本的には活動拠点を東京に置き、月に2～3回地方を訪れて農業に従事するというスタイルです。この辺が批判を集める種となり、｢農業をなめている」「考えが甘い」等の批判をずいぶん受けたようです。でも、私は批判はおかしいと思うのです。藤田さんの目標は若者の関心を農業に向ける事です。
自分が農産物を生産し専業農家になることではありません。　確かに、ちょっとだけ農家の真似事をして、苦労もろくにわからずに「農業をＰＲ」なんてできるかという批判者の言い分も判らなくはありません。
でも、どっぷり農業に漬かった経験がなければ、農業をＰＲしてはいけないという事はないでしょう。彼女は彼女の持つ特性を利用して「農業をＰＲ」しているのです。それで良いのではありませんか？



＜私にも似た体験が＞
全く分野が違いますが、私にも似た体験があります。私は経理マンです。一般的に社内では経理マンの立場は弱く、経営や営業に係る意見や要望などを主張すると、「経理のくせに何を言っているのか？」という趣旨のご批判をよく受けました。
特に営業関係者からの風当たりは強かったような気がします。「営業の苦労も知らずに」という事なのでしょうが、営業の現場にどっぷり漬かり、苦労してしまっている人には見えなくなっている事もあるでしょう。

現在私は、税理士として経理や税金に係る側面から各社の社長をサポートする仕事をしています。極力お客様の会社の役に立とう、社長の支えになろうと心掛けて仕事に従事していますが、どんなに頑張っても所詮は社外の人です、当事者にはなれません。社長の苦悩だって100％共有する事はできません。　だからといって、助言を控えたり、無難な話しかしないのでは私自身の職務を全うできません。所詮は部外者、でも私の立場だからこそ言える事、見える事を臆することなくお伝えしていきたいと考えています。



＜農業経営法人＞
数年前、農業経営法人という言葉が流行りました。通常「農業」は個人事業として行う事が多いのですが、法人組織化し、農作業を近代化して工場のような設備で農作物を計画的に生産していく･･･というものです。
カッコいいですね。なんかＳＦ的な雰囲気を感じます。藤田さんは自然の良さを前面にだして農業の良さをＰＲしていますが、私としては農業の将来図は農業経営法人にあるような気がします。設備が整い、経営基盤のしっかりした農業経営法人なら若者だって就職してくれるのではないでしょうか。

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