2015年09月14日

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
~コンサルタントはこうして組織をグチャグチャにする~
カレン・フェラン 著  神埼朗子 訳





<経営コンサルタントの活用>
「経営コンサルタント」という方が顧問先の会社にやって来る事があります。残念ながら、これまでの経験では、自らの売込みや知り合いの紹介でやって来る「経営コンサルタント」で質の高いアドバイスを提供する方に出会った事がありません。突飛で荒唐無稽な目標を「売り」にしたり、経営書に出てくるカタカナ専門用語を多用し、当たり前の事をオーバーアクションの身振り手振りで説明したり、画一的な評価手法で会社の経営効率や工場の業務フローを改善しようとしたり、あるいは、目先の補助金獲得を熱心に推奨したり。・・・・そして短期間で去っていきます。

かき回されるだけで、中長期的には決して会社のプラスにならないと思うのですが、中には興味を持つ社長さんもいらっしゃいます。・・・・そんな訳で私は「経営コンサルタント」にあまり良い印象を持っていません。専門分野をしっかり持ち、地に足のついた指導で、着実に実績を上げる素晴らしいコンサルタントの方もいらっしゃるのは存じ上げていますが、残念ながらこういった方にはなかなかお会いできません。


<中小企業の経営改善>
中小企業の経営にも、経営理論や経営手法を積極的に導入し、効率的に成長・拡大を目指そう・・・という考え方もあるとは思います。しかし私は、小規模企業はもっと地道に着実にその企業の「コア」となる商売を積み上げて会社の基盤を整えていくべきだと思います。
会社を一番良く知っているのは他の誰でもなく社長自身です。そしてこれまでも散々に知恵を絞って経営してきたはずです。突然やってきた外部の方の助言や分析・評価で、いきなり会社が良くなる訳が無いのです。


<四半世紀の経営理論を総ざらい>
さて本書の内容です。題名から、もう少し泥臭い本かと思いましたが、論理的でアカデミックな内容です。
マイケル・ポーターの「5つの競争要因」と「3つの基本戦略」。(市場分析やSWOT分析へと通じます)
ジャック・ウエルチの「株主価値の創造」。(ROE、ROA、等の経営指標を重視する経営)
ハーバードビジネススクールで提唱された「コア・コンピタンス経営」。(独自の得意分野・技術の活用による新市場の開拓)
「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」(業務フローの根本的見直し)
「シックスシグマ」(統計による生産管理)
「バランス・スコアカード」(財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の4つの評価指標からの目標管理)
「業績評価・目標管理による人事評価制度」(会社の目標や業績と人事評価・報酬とをリンクする制度)

本書は、こういった手法を現場で導入したことによる失敗や問題点を経験談として載せています。とても懐かしい思いに触れたような感じがしました。昔勤めていた会社で経験した事や、以前に読んだ経営の本に書いてあった事を総ざらいしているかのようです。


<結局はコミュニケーションと信頼>
著者は失敗談とその原因を述べていますが、決して上記の経営理論を否定している訳ではありません。ただ、こういった理論を一律的な方法論で複数の会社に導入しようとするため、上手く適合できず失敗に終わると述べています。

反対に、コンサルが上手く機能する場合、経営理論による方法論を現場に浸透させる過程の中で、部門間の従業員・役員のコミュニケーションが活発化し、信頼関係が生まれ、結果として一丸となった経営が実現できると述べています。

方法論や手法よりも、「コミュニケーションと信頼」。これを整える事が最重要のようですね。


(静岡市立御幸町図書館所蔵)





  


Posted by 書架の番人 at 08:08経営