2012年09月28日

豆大福分析 だれもがハマる「損得勘定の落とし穴」のカラクリ

豆大福分析 だれもがハマる「損得勘定の落とし穴」のカラクリ
中元文徳 著

豆大福分析 だれもがハマる「損得勘定の落とし穴」のカラクリ



<豆大福を落としたらいくらの損?>
売価100円、仕入値30円の大福を1個落としてしまったら、この店主はいくら損をしたのでしょうか?(※この商品はいつも大人気で、毎日必ず売切れとなります)
売価100円、仕入値30円のドーナッツを1個落としてしまいました、この店主はいくら損をしたのでしょう?(※この商品はあまり人気がなく、残念ながらいつも5個程度売り残して廃棄が生じます)
売価100円、仕入値30円のアイスクリームを1個落としてしまいました、この店主はいくら損をしたのでしょう?(※この商品はいつも2~3個の売れ残りが生じますが、日持ちするので翌日以降に販売できます)

という問いから始まる本で、著者が「会計」の不確実性を説明するために、学生によくする質問だそうです。

答えは、①は100円の損。店頭に並べていれば必ず100円の現金に換わるのですから。
     ②は損失なし。どのみち毎日5個程度の廃棄損が生じているので、
      1個落としても その日の廃棄が4個になるだけです。
     ③は・・・・答えなし(不明)だそうです。


<機会利益・機会損失>
この問いには、商売の上で重要な「機会利益」「機会損失」の概念が含まれています。
在庫管理や取扱商品の品揃えについて重要な考え方です。つまり幅広い商品を揃え、在庫を厚く持てば、「売る」チャンスは広がり、多種多様なニーズを持った顧客の要望に応えることができます。しかし、いわゆる「商品の回転」が悪く、商品管理にコストがかかり、仕入代金の資金繰りにも悩まされます。反対に、売れ筋商品に絞った取り扱いを行えば、「商品の回転」は早く、無駄を省き資金繰りも楽になります。そのかわり、もし商品を揃えていれば売れていたかもしれない一定の売上げは予め諦めることになります。


<㈱調剤薬局クリアの戦略>
「利益が10倍になったある調剤薬局の処方箋」の章は、在庫戦略をキーに会社の考え方や従業員の意識までも大きく変革することに成功した事例として掲載されています。病人に対応する調剤薬局の使命を考え、薬の品揃えを多くし、こまめに在庫確認を行うことで在庫の量自体は減少させたのです。なかなか爽快感があって楽しく読めます。この章だけでも読む価値はあるでしょう。

ただし、どの会社にも当てはまる戦略ではありません。以前このブログに掲載した「ドラッガーと会計の話をしよう」では逆の戦略でした。ワインや料理を売れ筋商品に絞り、一定の機会利益を捨てることで、資金繰りや店舗運営に余裕を持たせたのです。つまりはケースバイケースで、この見極めを上手くやるのが「経営」というものなのでしょうね。


<会計の呪縛>
この本、前半は在庫や機会損失等の話なのですが、後半は現代の会計の限界についての話になります。
会計は定められた一定のルールに従うものであり、そのルールは一定の前提に基づいたものであることを忘れてはならないと言うのです。

例えば始めに示した豆大福の話。会計では①②③ともに30円の営業外損失(搬送中の事故として原価に含めるか販売管理費の雑費処理もあり得る)となります。これは会計が売上については「実現主義」の考え方を採るためです。
つまり「売れた」という事実が発生したとき、初めて100円を計上できるのです。だから会計上の損失は30円です。

でも、30円の損が正しいという事では無いのです。会計上はそういうルールにしているだけなのです。

特に私のように会計・経理を職業にしていると、この事を忘れ「損失は30円に決まっている!」と思い込みがちです。つねに柔らかな頭で物事を見つめられるよう気をつけたいですね。

(静岡市立御幸町図書館所蔵)


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Posted by 書架の番人 at 00:45 │会計

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