2014年07月05日

絶対に損しない相続

絶対に損しない相続
五十嵐明彦 監修
絶対に損しない相続



<半分マンガ、半分税法解説です>
また・・・表紙に釣られて買ってしまいました。この手のビジネス書を見るとつい手が出てしまいます。
しかし、買って損のない内容でした。漫画と相続税の解説が交互に書かれており、内容はしっかりしています。

漫画部分も、相続税絡みで問題となる代表的な実例が描かれており、漫画部分だけ読んでも問題の把握に効果があると思います。特に「いつの間にか二次相続に!家族崩壊の危機」や「相続対策でアパートを建築した家族の悲劇」のパートは、これまで「相続」の事を考えていなかった方は是非一読をお勧めします。これで1,000円なら安いものです。

<二次相続>
相続税全般のお話や平成27年1月から施行となる基礎控除の引下げのお話は以前にも書きましたので、今回は2次相続について書いておきます。

子供(相続人)の立場から見て、父母のどちらか一人(一般的には父が先)が亡くなった時の相続が1次相続、次に残された1人(母)が亡くなった時の相続が2次相続です。


<大変なわけ>
2次相続が「大変」と言われるのは以下の3つが原因となっているようです。

①仲裁者がいない
税法ではなく、遺産分割の話し合いの問題です。1次相続の際には片親が生存していますので、兄弟間でも揉め難いのです。
反対に2次相続では両親ともこの世に居ないので、兄弟だけでの話し合いとなり、話をまとめ難いと言われています。

②2次相続では法定相続人が1人少ない
1次相続の際には、法定相続人に残った片親+子供がカウントれますが、2次相続の際には子供だけです。法定相続人が1人少ないのです。
これは、基礎控除額も2次相続時の方が少ない事を意味します。つまり1次相続と同額の相続が2次相続であった場合、2次相続時の方が相続税は多くなるのです。

③1次相続時の基礎控除活用が不十分
1次相続時に「お父さんの財産なのだから、一旦お母さんが全て相続すれば・・・」と手続きした場合に生じる問題点です。

もし、父親死亡の相続時に母親と子供が相続財産を分けていたなら、この時点で父親の遺産の一部は子供へ移転し、次に母親死亡時の相続財産はその分少なくなっています。これをせず、全部一旦母親が相続すると、2次相続時に全ての財産をいっぺんに子供が相続することになるので、相続税が高額になってしまうのです。

一見、1次2次トータルの相続財産は同じなのだから、どういう順序・配分で相続が行われても、結局は同じではないかと考えてしまいそうですが、違います。原因は「基礎控除」にあります。

基礎控除額までは相続税額は0円です。1次相続2次相続の2回分これを活用して子供世代に財産を移転させるのが効果的です。「一旦全てお母さんが相続」のケースでは1次相続での基礎控除が子供世代への財産移転へ活用されていないのです。

「配偶者の税額軽減」という制度があり、大雑把に言うと、母親が相続する財産については法定相続分と1億6千万円いずれか大きい方の金額まで相続税が課税されません。このため1次相続時の遺産分割を母親に厚く配分すれば、とりあえずの相続税を軽減できます。

しかし、2次相続まで考えれば、「一旦全てお母さんが相続」は必ずしも得ではありません。


<ご注意>
実務手続き・判断にあたっては、ご自身で法令・税法等をしっかりご確認願います。ケースによって結果は異なるので、充分ご注意下さい。また、言うまでも無い事ですが、「相続税」を安くする事だけが遺産分割の判断基準ではありません。実社会においては相続税上は損する事を承知の上での遺産分割も充分にあり得るのです。

(丸善&ジュンク堂書店 新静岡店にて購入)

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Posted by 書架の番人 at 08:07 │税金

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