2012年08月14日

社長!会社の個人成りを考えてみませんか?

社長!会社の個人成りを考えてみませんか?
小林真寿美 著

社長!会社の個人成りを考えてみませんか?



<会社を個人事業へ改組>
著者の言う「個人成り」とは、法人で行っていた事業を個人事業として行い、法人は清算することです。
「法人成り」の逆パターンですね。ちなみに「個人成り」は著者の造語です。一般的な言葉ではありませんのでご注意を。
昨今では、上場企業が様々な厳しい制約から解放される事を目的に、自ら望んで上場廃止となる動きもあるようです。著者の言う「個人成り」も同じ発想ですね。




<メリット・デメリット>
個人事業・法人事業ともにそれぞれのメリット・デメリットがあります。

個人事業のメリット
①組織運営上の制約(株主総会・取締役会の開催等)が無い。
②所得が低い場合は法人より税率が低い。また、事業所得は不動産所得等と損益通算できる。
③従業員が少人数の場合、社会保険への加入義務が無い。

個人事業のデメリット
①取引先・顧客等への信頼度が法人に比べやや劣る。
②従業員の組織への帰属意識やモチベーションが保ち難い。
③事業主への給与支払いができない(損金にならない)ため、課税所得が大きくなる。
④同一生計の親族への給与を「損金」にするためには、青色専従者の届出が事前に必要。
 また、これらの者が学生であったり他社とのかけもち勤務の場合は「損金」にできない。

まだまだ色々ありますが、個人事業の最大の特徴は法人に係る各種規制や制約から開放され気楽に事業を行えるという点に尽きるのではないかと思います。



<節税効果は疑問>
税金面の個人・法人の損得は条件次第で変わるので単純に比較できないのですが、社長や家族への給与支給を「損金」にできる事を考えれば、一般的には法人の方が有利です。

本書に書かれているような「会社が赤字でも社長の給与には所得税が課されるので個人事業の方が税金面でも得」というケースでは、翌期から単に社長の給与を減額すれば解決できます。社長の給料を生活可能額ギリギリまで減額してもなお会社が赤字と言うケースでは、もはや個人・法人の形態の変更ではなく事業自体の廃業を考えるべきでしょう。



<信用状況への影響が心配>
なにより「事業縮小傾向」「赤字続き」の状況下で、会社を清算すれば、いくら債務は全て個人が引き継ぐ、仕事も個人事業として続けると説明しても周囲は信用状況を疑います。従業員も仕事を続けてくれるでしょうか?(社員ではなく、その家の「使用人」という立場になってしまうのです。社会保険も無くなり自分で国民健康保険・国民年金へ加入するのです。)

このように考えると、取引先・顧客・従業員との関係を保ちながら事業を続けていくのであれば、たとえ赤字経営下にあろうとも「個人成り」はあまり現実的な選択肢では無いと私は思います。

(静岡市立御幸町図書館所蔵)

社長!会社の個人成りを考えてみませんか?




同じカテゴリー(経営)の記事画像
会計は1粒のチョコレートの中に
実はおもしろい経営戦略の話
ブラック企業に勤めております。
女子高生ちえの社長日記
下町M&A
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
同じカテゴリー(経営)の記事
 会計は1粒のチョコレートの中に (2017-09-01 21:56)
 実はおもしろい経営戦略の話 (2017-07-08 08:19)
 ブラック企業に勤めております。 (2016-12-10 08:14)
 女子高生ちえの社長日記 (2016-04-09 19:40)
 下町M&A (2015-10-01 08:08)
 申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 (2015-09-14 08:08)

Posted by 書架の番人 at 00:45 │経営

削除
社長!会社の個人成りを考えてみませんか?