2012年07月27日

コレキヨの恋文

コレキヨの恋文 三橋貴明著

コレキヨの恋文



<日本経済と我々の商売>
今回の本は、これまで採り上げてきたのものと違い「日本経済」を主題としたものです。
(・・・表紙絵に釣られた点では、これまでと同じですが・・・)

一国の経済となると、1人のビジネスマンの働きかけにより動かせるものではありませんし、また、その仕組みや動きを熟知したところで、自分の商売への活用は難しいものです。
それゆえ普段つい後回しにしがちな分野なのですが、この国の経済の安定の上に我々の日々のビジネスが成り立っているのもまた事実です。


<本書の内容>
さて、本書の内容です。政治混迷と政党実力者の思惑により若干34歳で内閣総理大臣となってしまった「霧島さくら子」さんが、首相官邸の桜の木の下でタイムスリップし、高橋是清に出会い、経済政策の手ほどきを受けるというものです。

(注:以下に本書の「経済手ほどき」の要約を書きますが、私自身あまり経済理論に明るくないので正確に記述できているかどうか分かりません。興味のある方は是非本書でご確認ください)

1.デフレ経済からの脱却に必要な経済政策

 ①国民経済と企業会計・家計との違い
  国民経済では「所得=支出」となる。つまり、ある人の所得は別の人の消費支出の集合体から成り立つ。国民が貯蓄をするとそのお金は滞留し、他者の所得を形成しないので経済は萎んでしまう。税金徴収も同じ。
  一方、企業会計や家計では自分の事だけで完結するため、支出や貯蓄の他人への影響を考える必要が無い。この点で大きく違う。よって、国家財政や経済政策を論じる際は、企業会計や家計と混同してはいけない。

 ②銀行の役割
  銀行では貯蓄された資金を「融資」により他者へ渡し、このお金が消費支出として使われる。このため滞留資金を再び世に送り出す役割を持つ。さらに融資した資金が他者の預金を形成するため、手元資金以上に融資を拡大させる事が可能(信用創造)でこの効果により経済は成長していく。

 ③政府の役割
  政府も税収を財政支出として再び世に送り出すため銀行の「貯蓄」「融資」と同様の効果を持つ。ただし銀行と違い、「税収」「財政支出」のバランスを意図的に崩すことができる。

 ④デフレ脱却の政策
  デフレ下では、「税収」を抑制し「財政支出」を意図的に増やすことにより国民に「仕事」を提供し、物価上昇を後押しして経済の拡大を図る政策を実行すべき。
  経済活動が過熱気味でインフレを抑制したい場合は、逆の政策を実行すべき。 経済の動向を注視し、用いる政策は常に変えていく必要がある。


  
2.TPPへの参加の是非

 ①自由貿易の本質
日本は島で輸出入により経済が成り立っているというイメージが強いが、他の先進国と比べると自己生産・内需消費型である。自由貿易の本質は、「供給力」の増加。したがってデフレである現状において自由貿易を推し進めると、一層デフレ傾向は加速する。

 ②関税という盾
関税権は、自国の経済を守り育てるためには非常に重要なもの。「自由貿易」「グローバル」などの言葉が先行し、自由や世界標準に壁を作ったり背を向けるのは悪いイメージを抱いてしまいがちだが、言葉に惑わされることなく、自国の将来を見据え、その本質をしっかりと考える必要がある。


<認識をしっかり持つ>
経済政策のあり方や国民経済の捉え方は様々な有識者がそれぞれの見解を持っており、また現在の政治課題と絡むため、何が正しいか断じることは困難です。本書に示された内容も、これが絶対的に正しいというものではなく、異論の多いところでしょう。

それでも、本書はこの国の経済や政治を考えるきっかけを与える良書だと思います。

(丸善・ジュンク堂書店 新静岡店で購入)

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Posted by 書架の番人 at 00:45 │その他

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