2012年06月22日

インサイドアップル

インサイドアップル   アダム・ラシンスキー著 依田卓巳訳

インサイドアップル


<アップル社>
「iphone」や「ipad」で有名な「アップル社」の経営手法について書かれた本です。
「アップル社」は秘密主義で社内の組織や製品開発の過程を外部から伺い知ることが困難と言われています。
また、昨年亡くなられたスティーブ・ジョブズ氏が社内全部門に対し非常に強い影響力を及ぼしていたことでも有名です。


<社風と経営手法>
本書に書かれている「アップル社」の特徴は概ね以下のようなものです。

①秘密主義
 外部への情報漏えいには厳罰で臨みます。社内でも部門間の情報交換を遮断していたり、社員でも立入可能区域を限定(しかも階級ではなく仕事内容で限定するため部下は入室できても上司は入室できないなど)する秘密主義の徹底します。商品発表時のインパクト・新鮮味の確保やライバル企業へのアイデアの流出を防ぎます。

②経営組織
 会社の経営情報を幹部社員で共有するという意識がありません。総合管理のための管理職は殆ど存在せず、専門職としてのリーダーという存在であったり、そもそも「組織」のあり方が、一般的な「経営」→「部」→「課」というようなピラミッド構造をしていません。

③従業員
 全体像を知らされること無く、自分の仕事を全うすることに全力を注ぐよう指示されます。また自己の考えやアイデアを提案するというようなワークスタイルではなく、指示された仕事を確実にこなすことを求められるようです。
 職場は自己実現の場では無く、個性を抑えることが求められます。しかし「アップル社」の素晴らしい製品の開発に関わることができ、満足度は高いようです。

④経営者の影響
 CEOであるスティーブ・ジョブズ氏が細かな部分に渡るまで指示(口出し)をし、かなり部分の実質的な決裁権限を握っていました。社員の価値判断基準も「スティーブならどう考えるか」です。

⑤商品デザイン・企業イメージへのこだわり
 商品への情熱は高く、中でも商品デザインを重視します。デザインを優先して商品の機能を絞ることもあります。また、商品の開発過程がパッケージやデザインから入ることもあります。 
 企業イメージを非常に大切にし、広告宣伝やプレス発表は会社の重要事項です。表に立つのは必ずスティーブ・ジョブズ氏であり、他の役員・社員は目立たぬよう控えます。

⑥他社との関係
 自社の要求を最優先し妥協しません。利害が対立すると非常に強硬な姿勢で臨む傾向があるようです。


<今後の動向に注目>
企業経営はオープン化、透明化が最近の流れですし、権限委譲や責任の明確化、目標や全体像の共有ができている会社が良い企業と言われるています。
本書を読むと「アップル社」はこのような「優良企業」の価値観とは全く異質の存在です。見方によっては「気難しく・自我の強く・人間つきあいの下手なエンジニア」そのもののような企業体質とも思えます。
しかし「アップル社」が現時点で優良企業であることは間違い無い以上これも「あり」なのだと思わざるを得ません。

私自身、これまで学んだ「常識」が崩れ去る思いでした。雑誌や書籍などの情報収集のつもりが、逆に私自身の概念や常識を固定していたのではないかという懸念すら感じた1冊です。

ただし、今までのアップル社はスティーブ・ジョブズという個人の力で成り立っており、それゆえに上記のような企業の体制でも「優良企業」であることが出来たという見方もあります。
今後このような体質を維持したままで、従来のような「優良企業」であり続けられるか、注目すべきところでしょう。


~今回、書き過ぎですね。すみません。それだけ自分の中で整理のつき難い本でした。~
(静岡市立御幸町図書館所蔵)

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Posted by 書架の番人 at 01:16 │経営

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