静岡で働く税理士の書架より

社長！「経理」がわからないと、あなたの会社潰れますよ！
井上陽一　著




＜大丈夫、潰れません！＞
ちょっとキツめのタイトルですが、大丈夫。経理が分からなくたって、立派にやっている社長は沢山いらっしゃいます。
でも本書は「経理」に苦手意識をお持ちの経営者の方にこそ是非読んでいただきたい本です。
難しい簿記や会計の本ではありません。「経営」という観点から見た道具としての経理の活用法を大きな文字や大雑把な図解を交えて楽しく紹介しています。


＜経理担当者を放っとかないで！＞
私には「経理が分からなくても立派にやっている社長さん」には２つの共通点があるように思います。
①自分独自の業績把握方法を持っていて、その方法で上手く実態の把握ができている。
②「経理」「総務」担当者と意思疎通が極めて良好。

ここで私が特に申し上げたいのは②です。主力営業マンや企画担当者と同等以上に「経理」「総務」担当者とコミュニケーションを取っているのです。「僕は経理は分からないから・・」と言いつつも、「人」を介して「経理」「総務」の事務仕事を自分の手中に収めているのです。

例えば、ある時、私（税理士）と社長が偶然、繁華街ですれ違った事を、次回その会社を訪問すると経理担当の女性はちゃんと知っているのです。当然逆パターンの情報もしっかり社長に伝わっています。今月末の各仕入業者への支払資金の概算や、1ヵ月後の中間納税の概算、保健所や土木事務所への届出の中味まで、社長はちゃんと知っています。


＜本書の内容＞
本書は決算書の基本的仕組みから、資金繰りの注意事項、金融機関が決算書を見るときのポイント、簡単な経営分析などほんとうにザックリとさらっと記載しています。このさらっと感が私は好きです。
大雑把で、専門的にはいくらでも突っ込み所があるのですが、「忙しい経営者」「苦手意識を持つ経営者」でも読む気にさせます。そして結構良いことが書いてあるのです。


＜経営者の感覚は結構正しい！＞
本書の中の言葉です。私も「うんうん」と頷いてしまいました。「決算書を見るのがあまり得意でない」社長さんであっても、自社の決算書や試算表に「違和感」を感じたら、内容を確認してみる価値はあります。
「経営者の感覚は結構スルドイ」のです。経営者から見れば、もともとは自分の手の内の商売なのです。少々簿記会計に疎くても自分の商売は自分が一番よく知っているはずです。

帳簿上のズレの原因解明ばかりでなく、自身が考えているビジネスと実態との乖離やその原因など意外なものが見えてくる可能性があります。無論、経理処理自体が間違っていることだってあり得ます。

是非、経理担当者や税理士に「これ、おかしくない？」と声を掛けてみてください。「経理」を自社経営に活用する第1歩になるかもしれません。

（静岡市立御幸町図書館所蔵）

※今年も1年間ありがとうございました。本年の投稿はこれにて終了します。どうぞ良い年をお迎え下さい。