2013年05月21日

会社再生ガール

会社再生ガール
田中伸治 著

会社再生ガール



<企業再生のエンターテイメント>
読みたかった本がようやく手に入りました。企業再生を題材とした物語で、主人公のターンアラウンドマネージャーが活躍するお話です。
本書はビジネス書というよりは、企業再生を舞台としたエンターテイメントに近いかもしれません。「〇曜ドラマ劇場・・・」なんかの2時間ものの単発ドラマとしてTV放映しても面白いかもしれません。楽しく読める1冊です。


<財務内容を整理し、採算部門・将来性のある部門を残す>
企業再生とは、倒産に近い状態の会社を立て直し、収益を生み出す正常な状態の会社へと変貌させる事です。
とは言え、どんな会社でも再生可能な訳ではありません。今後、運営を継続することで、収益を生み出す見込みのある採算性・将来性のある部門を抱えている事が条件です。会社としては整理せざるを得ないのだが、この部門までも消えてしまうのは惜しい・・・というケースですね。


<具体的な手法>
具体的には債務の圧縮と不採算部門の整理・縮小をセットで行います。債務の圧縮では、金融機関の承認を得て担保物件(自社資産)を任意売却し、その代金を返済に充てたり、意債権者集会を開き、金融機関に債務の一部免除をしてもらうという手法を採ります。「私的整理」とか「民事再生法」とか聞いた事がある方もいらっしゃると思います。

また投資ファンドなどを介在させ、金融機関から「債権」を低価格で買い取り、会社再建後にその会社が「債権」を投資ファンドから買い取る事で負債を消滅させるといた手法もよく採られます。

将来残したい部門を会社分割で独立させたり、新会社を設立して営業譲渡をするなどの手法や、ビジネスパートナーを募りM&Aなどの手法を用いる事も行われます。

このような事からコンサルタント・弁護士・公認会計士・税理士といった人々が企業再生のプロジェクトに携わる事になります。ターンアラウンドマネージャーはこのような専門家を束ねプロジェクトの進捗管理を統括する役割を担います。


<自分には何ができるのか>
楽しく読める物語で、最後はHappyEndなのですが、この種の本を読むとなんとなく焦燥感が心に残ります。自分の担当するお客様のところで、この様な事が実際に起こった場合、自分には何ができるだろうか・・・という不安感です。

物語のヒーローのように事が運ぶ訳はありません。本書のように「大銀行の副頭取」や「平成の不動産王」などのツテなどあろうはずもありませんし、「銀座のママ」の知り合いだって私には居ません。そもそも実務経験の蓄積だって、このような案件はそんなに経験できる事ではないでしょう。

さらに報酬は?コンサルタントや弁護士が数百万の報酬を取る中で、月額2~3万円の通常顧問報酬でどこまで関わるべきなのか?
だからと言って蚊帳の外に居て良いのか? 結局、自分には何もできないのではないかという無力感を感じてしまうのです。

でも、せめて普段から経営者の傍に居る者として、この様な事があった場合、何が起こっているのか、専門家達はどういう解決の方法を採ろうとしているのか、数々の専門用語は何を意味するものなのか、わかりやすく社長に説明するぐらいのことはしたいものです。

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会社再生ガール



<1年間ありがとうございました>
このブログを始めてちょうど1年が経ちます。紹介した本・冊子はちょうど100冊。

これまで、もしこのブログを定期的にご覧いただき、拙い文章にお付き合い下さった方がいらっしゃるなら、本当にありがとうございました。心よりお礼を申し上げます。

今回の投稿をもって、このブログの定期運用を終了したいと思います。

(面白い本を読んだ時には、今後も投稿するつもりです。時々覗いていただけると嬉しいです)

ありがとうございました。





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Posted by 書架の番人 at 08:12 │経営

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