2013年05月17日

親が遺す不動産

親が遺す不動産
松浦健二 著

親が遺す不動産



<ありがたくない不動産>
少し変わったジャンルの本です。基本的には相続対策の本なのですが、税金対策の本でもなければ親族間の争い回避をメインテーマとした本でもありません。
あまり有難く無い「不動産」を相続財産として遺された場合の対処方をメインテーマとした本です。・・・珍しいですよね。
「有難く無い不動産」なんて罰当たりな表現なのですが、本書を読むと実は結構深刻な問題であることに気付きます。


<今の日本は家が余りまくっている!>
本書のある章の表題です。ちょっと大げさな表現ですが、言わんとする事は分かります。
現在の日本は少子化問題が深刻です。皆さんも自身の親戚について、親世代、兄弟世代、子供世代の数を考えてみてください。
血族だけでなく、姻族の数も入れて数えると、少子化が身近にはっきりと感じられます。将来的に親族の家や土地を現在の子供達世代が受け継ぐ様子を想像してください。どうでしょう、家、余りますよね・・・・(しかも、子供達、結婚して2人で1件の家に住むのですから・・・)

親世代は地方に居て、子供世代は都心や大都市で暮らすケースが多いのです。結果的に地方の自宅やバブル時代の都心まで1時間半以上かかるようなマイホームが大量に余る時代がすぐそこまで来ていると警鐘を鳴らしています。


<相続して・・・どうする?>
地方の家や田畑、通勤に不便な近郊住宅を相続して、その後どうするのか。そのまま放置すれば荒廃して近隣から苦情がきます。
「売る」「他人に貸す」「自身が住む」の3つの選択肢となるのですが、そもそも人口が減り「家」が余っているのです。「売る」・・・売れません!皆が同様に余剰不動産の処分に困る時代に、わざわざ不便な物件を買う人がいますか?「他人に貸す」・・・・同じ理由から借り手が居ません!「自分で住む」・・・・家族を連れて不便な場所へは移住できません!妻や子供が大反対し家族が分裂します。

ましてや、自分が耕すことの出来ない田や畑を相続したらどうしますか?

ほら、困りましたね!


<相続放棄>
いっそのこと、相続しなければ良いのでは?いいえ、実質それもできません。現在の民法の規定では、「相続放棄」は全ての財産について行うものです、一定の物件についてのみ相続しないという選択肢はありません。預貯金や有価証券、他の利便性の良い不動産物件といった相続財産まで放棄しますか?


<今のうちに利便性の良い物件への買い替える?>
根本的な解決策は本書でも示されていません。あえて言うなら、不便な場所の不動産は安くても、まだ買い手が居るうちに売って、都心や駅前の利便性のある場所の不動産に置換えておくことでしょう。 でもそれもできません。何故って、今現在は親世代がそこに住んでいるではないですか。移住してもらうなんて、まず無理です。

結局打つ手無しです。気分が暗くなってしまうのですが、でも考えなければならない問題ですね。

(静岡市立御幸町図書館所蔵)


親が遺す不動産




タグ :余剰不動産

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Posted by 書架の番人 at 08:12 │その他

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