2017年12月04日

新人OL社長になって会社を立て直す

新人OL社長になって会社を立て直す
佐藤義典 著



<あれから5年>
本書は「新人OLつぶれかけの会社を任される」の続編です。
前作を読んだのは自分の記録を見るとなんと2012年ですから、なんと5年越しの続編購読になります。前作はかなり気に入ったと記憶しています。軽いタッチの物語の中に、マーケティング理論が散りばめられていて読みやすく、しかも内容は実践的なものでした。

前作のブログ記事はこちら。(画像をクリックしてください)




<お店のコンセプト>
本書は大きな括りで言えば、自店の経営コンセプト探しのお話です。これが定まっていないばかりに主人公「売れタマ」の運営するイタリアンレストラン「ソーレ・シチリアーノ」は競合店に顧客を奪われていきます。幾つか対抗策を実行しますが、空回りしてお店の経営は返って悪化していきます。親戚の売れっ子コンサルタント「勝さん」の助言によりお店のコンセプトを明確化し、それに合わせた施策で「ソーレ・シチリアーノ」を復活へと導くお話です。 物語としては少々わざとらし過ぎる面もありましたが、この手の本では仕方ないですよネ。


<本書で学ぶべき事>
物語中に散りばめられている経営戦略のうち主な物は次の4つだと思います。

①経営理論BASiCS
 マーケティングを次の5つの要素に分けて考え明確化する
 B(BattleField)-戦場・競合   A(Assete)-独自の経営資源   S(Strength)-強み  C(Customer)-顧客  S(Selling Message)-メッセージ

②「強味」は結局次の3つしかない
 ・手軽軸-(競合より)早い・安い・便利
 ・商品軸-(競合より)高品質・新技術
 ・密着軸-(競合より)顧客の個別ニーズに対応

③せすじ評価サイクルを回せ
 ・戦略を考える  →  ・目標数字に落とし込む  →  ・実施策を考え実行する
 このサイクルをコマメに回し、戦略を修正しながら実行していく。

④顧客のマインドフローに合った対策を
 顧客が購買に至る(再来店する)までの心の動きを考え、それに応じた対策を立てる。
 「知る」→「興味を持つ」→「手に取る・行ってみる」→「他との比較を行う」→「購入する」→「使用する」→「満足する」
 購入に至らなかったり、再購入が無いのはこのどこかで引っかかっていることを意味する。
 その引っかかりを取り除く対策を立てる必要があるが、引っかかっている過程により対策は異なる。
 一般的に下流での引っかかりを是正するほど購買率に大きく寄与する。


<決定打に欠けるかナ?>
結局、「ソーレ・シチリアーノ」のコンセプトは「シチリアの太陽」だそうです。(この表現自体、具体性に欠け意味不明です)
「密着軸」に重点を置き、「ホームパーティーやってるみたい」なくつろげるお店を目指す。独自の経営資源は「優秀なスタッフ」だそうで、このスタッフを総動員して、顧客に寄り添ったおもてなしを行う事を目指します。

その結果・・・半年後には大変な繁盛店となり2号店の出店も決まる・・・・という物語ですが、どうでしょうか。もしこれが現実のお話であったなら低迷店の復活策としては「それでは弱いなァ」と感じてしまいました。持続性にも限界があるのでは?

読後の印象としては、1作目の方がずっと強烈なインパクトを受けたように感じました。でもあれから5年も経ちますからね。もしかしたら私自身「商売慣れ」して感受性が弱っているのかもしれません。

1作目は今でも御幸町図書館にあるので、今度行ったら手に取って読み返してみたいと思います。
 
 
(Amazonにて購入)




  


Posted by 書架の番人 at 20:43マーケティング

2017年10月03日

やってはいけないウォーキング

やってはいけないウォーキング
青柳幸利 著



<8000歩/20分の目標>
ジョギングやウォーキングは健康に良いとの事で、取り組んでいらっしゃる皆さんも多いと思います。
しかし!歩き過ぎ・運動のし過ぎは良くないようです。ウオーキングでは「1日1万歩が目標の目安」とよく言われていますが、本書によれば8千歩で充分とのこと。

その代わり、1日のうち20分間「中強度」のウォーキングを取り入れる事が大切と説いています。具体的には「会話がぎりぎり出来る程度の早歩きを20分取り入れた上でTotalで1日8000歩を歩く」というものです。
「8000歩/20分/毎日」という目標に強く惹かれました。これなら私にも出来そうです。 


<外に出る>
1日8000歩を歩こうとすると、日常生活だけでは無理で、必ず意識して外を歩く事が必要になってきます。私も20分の早歩きの時間は日常生活とは別に確保するよう心掛けています。

そこで気づいたのですが、「外に出る」事自体が非常に新鮮で気分転換になります。私は仕事上、顧客訪問を頻繁に行いますのでほぼ毎日外出しているのですが、仕事の目的で外出する場合と「ウォーキング」で外出する場合と気分が全然違うのです。大袈裟ですが景色も違って見えますョ!

ちなみに、本書によれば「外出する」「日光を浴びる」はうつ病予防にとても効果があるそうです。


<All or Nonn の法則>
運動やウォーキングが健康に効くのは、その量が一定のラインを上回った時だそうで、それに達しない場合には効果が殆ど無いのだそうです。 

要するに、「4千歩/10分」で、「8000歩/20分」の半分の効果が得られる訳では無く、8千歩に達しなければ効果は殆ど無いというものです。
つまり、一定のボーダーラインを超えることが大切。・・・・あれっ?この話、ビジネスの話でも聞いたような・・・・広告宣伝と同じですね。


<ストップウォッチと万歩計>
早速、ストップウオッチと万歩計を購入しました。100均ですが。
ミーハーだ・・・と笑われるかもしれませんが、案外、形から入るのも良いと気づきました。
これを身に着けると、流石に歩かない訳にはいかなくなりますから。

(Amazonにて購入)



  


Posted by 書架の番人 at 22:16その他

2017年09月01日

会計は1粒のチョコレートの中に

会計は1粒のチョコレートの中に
林 總 著




<V字回復>
会計と経営を題材にした寸劇ドラマのような構成の本です。
業績不振のジャパンスイーツ社を銀行出身のエリート入り婿社長が引き継ぎ、見事V字回復を成し遂げます。
ですが実は、販売見込みのない大量の在庫を作り、そのへコストは配賦して利益を上げるという姑息な手段を使ったのです。
さらには赤字部門の「チョコレート」部門と「喫茶店」部門を子会社へ押し付けて切り離し、自社との資本関係を断つという手段を強行します。

外部の人たちは社長の辣腕ぶりを賞賛しますが、古参の従業員たちは、会社の経営理念からかけ離れた利益の出し方に反発します。


<部門別損益>
V字回復したはずのジャパンスイーツですが、その後は資金繰りが急激に悪化し、経営難に陥ります。
実は、赤字部門として切り離した「チョコレート」部門はキャッシュフロー面では会社に貢献しており、「赤字部門」となっていた原因は本社経費の配賦によるものでした。そしてさらには、その配賦基準が実態とあっておらず、正確に本社経費を各部門へ配賦すると「チョコレート」部門は黒字で、他の自社へ残した部門こそが赤字であった・・・というオチです。

部門別損益管理において間接コストの配賦はどうしても恣意的になりがちですね。さらに一歩踏み込んで言えば「正解は無い」のかもしれません。また、組織が大きくなると、各部門間の思惑や責任者の保身が入り込む可能性も大いにあります。難しい問題ですね。


<配賦しないのもアリでは?>
小規模企業の経理においても、部門別あるい営業所別の損益試算表の作成を依頼されることがあります。
場合によってですが、私は管理間接コストを各部門に配賦しない部門別試算表を作成し、社長に渡すことがあります。
「A部門」「B部門」「C部門」(あるいは本店営業部門・B支店・C支店)の他に「本社管理部門」というものを作ってそこに計上し、「管理コスト」をABC各部門には配賦しないのです。

理由は、「本社管理部門」の経費コントロール権はABC各部門(支店)長に無く、各部門長が責任を負うべき立場に無い事、そして、本社部門の経費を包括しての全社損益コントロールを行うのは社長自身の責務であることを明確化するためです。


<本社管理部門の責任者は社長です>
社長によっては「本社管理部門って・・・何コレ?きちんと各部門へ割り振ってヨ!」と仰る方もいらっしゃいます。ですが、「本社管理部門の赤字を最小限にコントルールできるのは、社長、あなたしか居ませんヨ。そして本社管理部門の赤字を補って余りあるだけの利益をABC各部門にあげさせるよう全社的なコントロールができるのも社長、あなただけですヨ」と申し上げます。

つまり小規模企業では、本社管理コストを各部門に配賦し、その責任を部門長に押し付けてA+B+C=会社利益の構図を作り、社長は「さあ皆んな頑張れ!」と旗を振るだけ・・・なんて事では立ち行きません。是非社長自らが積極的に損益コントロールに乗り出していただきたい。


<会社の目標とは?>
資金繰り、キャッシュフローと期間損益(利益)の矛盾点は多くの経営指南書で書かれています。本書でもお決まりのように題材となっています。しかし、今回はさらにその先を考えさせられました。

会社経営とは、いったい何を目標に進めていくべきなのか。決して毎期の「利益」の最大化ばかりを追うのでは無く、キャッシュフローにも気を配り、ブランド力を高め、社会的にも意義のある会社に・・・・なんて言っても掴みどころがありません。私は社長を経験したことはありませんが、もしその立場になったら、何を追い求めて行けば良いのか?

本書にその答えが明示されている訳ではありません、でも朧気ながら私なりの考えが浮かびました。
自社の「将来キャッシュフローの最大化」これが会社経営の本来の目標ではないでしょうか。
「当期の利益を上げる」「ブランド力を強化する」「従業員を育てる」「社会から必要とされ役割を担う」「ファン層の顧客を作る」「付加価値の高い商品を開発する」。これらすべては「将来キャッシュフローの最大化」に繋がる事です。


<上司の言葉>
余談ですが、昔勤務していた会社の管理会計部門の長であった上司の言葉を思い出します。
何の議論だったか忘れましたが、私が「会社の目標は当期利益の最大化」という趣旨を主張をしたところ、その上司から言われました。
(上司) 「伊藤君、当社の目標は当期利益の最大化では無いよ?」
(私)  「えっ?違うんですか?毎期毎期今できる最大の努力を払って利益を最大化することが会社の目標では?」
(上司) 「当社の目標は、安定的かつ将来に渡る永続的な利益を確保していく事だヨ。勿論その利益というのは高い水準であることが前提だけどね。当期利益を最大化する事とは違うんじゃないかナ?」
(私) 「そうか!それは、当期の利益に多少マイナスに働く選択枝でも、それによって来期、翌来期の利益にそれ以上のプラス効果を与えるならそちらを選ぶという考え方ですね。」
(上司) 「う~ん、まぁそうなんだけど、もっと長い期間を考えるんだよ、ずっと先まで!」

あれから30年近い年月が流れますが、「当社の目標」を明確に口にしたのはあの上司のあの言葉だけです。
いや、実は色々な人が色々言っているのでしょうが、私の記憶に残ったのはあの言葉だけです。残念ながら、その上司は昨年他界されました。
「安定的かつ将来に渡る永続的な利益の確保。その利益は高い水準であることが前提」・・・とは、今にして思えば「将来キャッシュフローの最大化」と同義だと思うのです。・・・・違いますか?室長・・・


<期間損益の合計額は全体利益に一致する>
ちなみに会計の基礎理論では、期間損益(毎期の利益)の合計額は全体利益(会社設立から終焉までの利益の合計)に一致します。
そして、全体利益はキャッシュフロー利益と一致します。
ですから、結局は将来キャッシュフロー(厳密には会社設立から終焉までのキャッシュフロー利益)は期間損益(毎期の利益)の合計額に一致します。


(静岡市立御幸町図書館所蔵)




  


Posted by 書架の番人 at 21:56経営

2017年07月08日

実はおもしろい経営戦略の話

実はおもしろい経営戦略の話
野田稔 著




<経営戦略は普段の生活にも役立つ>
けっして表紙に釣られて購入した訳ではありません。私が本書を購入したのは、このフレーズ「経営戦略は普段の生活にも役立つ」に惹かれたからです。何気なく日常生活を送る中でも、実は我々は様々な選択を行っています。

しかし、その全てを、本当に自分の意思によって選択できているのでしょうか。私は様々な広告、キャッチフレーズ、場合によっては選択枝の提示される順序等で、かなり選択を誘導されているのではないかと考えています。 最近そんな事を漠然と考えていたので、「経営戦略は普段の生活にも役立つ」というフレーズは心に響くものがあったのです。


<表紙のインパクト>
表紙に釣られたのでは無い・・・と断言しましたが、この装丁はかなりインパクトがあります。ビジネス書が置かれた本棚にこの本が積まれていれば当然、一旦は視線を奪われます。・・・男性の悲しいサガでしょうか。

しかも、手に取って見ると表裏の表紙ぶち抜きのイラストです。


仕掛け人は著者なのか、編集者なのか分かりませんが、ヤリ手ですね。 ハズシたら「痛い」だけですが。 残念な事に、本書の内容は表紙とは全く関係ありません。

<不確実性>
本書では、「経営は不確実性が多数絡み合った結果であり、過去の事例を研究して理論を構築しても、直接的には現在の経営には役立たない」事を潔く認めています。この点は非常に好感を覚えました。ただ、傾向をつかみ取り、現在の経済動向や環境変化に照らし、対処法等で「使えるものがあれば使う」というスタンスは、非常に良いと思います。

このブログも開設以来200冊近い「ビジネス書」を紹介してきましたが、「不確実性の集積」「使えるものがあれば使う」というスタンスには、心から頷けます。

<緩急をつけて働く>
本書の中の1節で、「労働生産性」の話があり、F1のフェラーリチームと日本のチームのメカニックの働き方についての記述がありました。一般的にF1の整備は「時間との闘い」ですので、メカニックは昼夜を問わず、食事もろくに取らずに取り組みます。しかし、フェラーリチームは決められた時間内でピッチリ仕事を行い、定刻になると美味しい食事をして帰ってしまいます。それでも、結果は日本のチームはフェラーリの整備に及ばないというのです。
本当にそうなのかどうかは分かりませんhが、「技術職」「芸術性の高い職」「専門職」の労働生産性とはそういうものかもしれません。自身に当てはめてみても、1日ベッタリPCに向き合っている日よりも、限られた時間の中で仕事をせざるを得ない日の方が、生産性はもちろん、仕事の「質」も高いような気がします。

<経営戦略は普段の生活にも役立つ・・・の話は?>
最後まで読みましたが、結局一番惹かれた「経営戦略は普段の生活にも役立つ」についての具体的なお話は出てきませんでした。
第1章がこの宣言から始まったのですから、せめて、これらの経営戦略を具体的に日常生活にどう役立てるのかと言う例示や提案はしてもらいたかったです。 この点は、表紙絵が内容と全く絡まない事と同様に、「単なる釣りだったか・・・?」と残念でなりません。

(丸善&ジュンク堂書店 新静岡店にて購入)
※なお、本書は静岡市立御幸町図書館5階の「新刊コーナー」でも見かけましたので、興味をお持ちでしたらこちらを利用しても良いかもしれません。




  


Posted by 書架の番人 at 08:19経営

2017年05月23日

これは経費で落ちません!2

これは経費で落ちません!2
青木祐子 著




<待望の続編>
以前ご紹介した「これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~」の続編です。前回同様、慣れによる社内経費の私的流用を主題とした小説です。会社の経理といえば、普段はあまり目立つ事は無く地味な存在ですから、ちょっと変わった小説と言えるでしょう。
とは言え、前回とても楽しく読めましたので、きっと続編が出ると思っていました。


<経費の倫理感>
さて、この小説では、主人公の森若さんは、不正や経費の使い込みを見つけても、それを白日の下に晒そうとはしません。しっかりとした裏を取った上で、本人と「交渉」し落としどころを探します。そして結果的に今後は使い込みをし難いように仕向けます。

ある意味、とても「大人の対応」だと思いますが・・・果たしてそれで良いのか、「経理」を職業としている者としてはチョット歯がゆく感じます。


<バックリベート>
この本「第2巻」の最終話はバックリベートのお話です。(仕入業者等から当社社員が内緒でリベートを受け取っているケースです。)自社のお金を横領する訳ではないので、ともすると張本人は罪悪感が薄いのかもしれません。でも、結果的にそのバックリベート分は仕入れ値が高くなったり、より優れた他社商品の仕入れを阻んでいるのですから、自社に多大な損害をもたらしている事に変わりはありません。

<やっぱりスーパー経理マン!>
税務調査等で、こういったバックリベート等の不正が発覚する事があります。税務調査は当社の経理だけでなく、相手側の処理との整合も見るのでこういうものが発覚するのですが、自社側の経理しか見れない立場の人間がバックリベートに気づくというのは相当な「経理の達人」です。やっぱり、森若さんは凄腕経理マンですね。

また続編が出そうな雰囲気です。楽しみですネ。

(丸善ジュンク堂書店 新静岡店にて購入)




  


Posted by 書架の番人 at 08:11会計

2017年04月06日

これ、いったいどうやったら売れるんですか?

これ、いったいどうやったら売れるんですか?
永井孝尚 著
これ、いったいどうやったら売れるんですか



<表紙のインパクト>
本書の表紙のインパクトに感化され、久々にビジネス書ブログを更新する気になりました。
キャッチコピーとイラストの組み合わせが非常に効果的な表紙だと思います。この表紙を考案した事からも著者は「販売力」のある人物だと思います。

「いったいこれ、どうやったら売れるんですか」というコピーは、商売をやっている人の気持ちをダイレクトに惹きつけます。そしてこのイラスト、寝そべった若い女性が半身を起こし、積み木(でしょうか?)を両手に持って差し出しています。女性の柔らかな仕草と強烈なキャッチコピーの組み合わせが強く印象に残ります。

もしもイラストが綺麗なカラー刷りだったら、より一層インパクトが強いのでは?と思いますが、もしかすると色が無く控えめだから良いのかもしれません。


<100円のコーラを・・・の著者>
読んだ事のある著者の文章だ・・・と思い著者の紹介欄を見たところ、「100円のコーラを1,000円で売る方法」の著者でした。以前このブログでもご紹介していますね。ベストセラー本だけあって、あの本もとても良い本だったと思います。


<基礎的な営業戦略本>
本書の内容は、きわめて初歩的な営業戦略を各章ごとに掻い摘んで説明しています。
バリュープロポーション、オーシャンブルー戦略、顧客とブランド、商品戦略と顧客開発、価格戦略、チャンネル戦略、ランチェスター理論、プロモーション戦略、キャズム理論、ポーターの5つの力と競争戦略・・・・

特に目新しい内容はありませんが、例示とともにわかり易く解説し、読みやすい1冊となっています。
個人的には、プリン屋さんの「価格戦略」の話やセブンイレブンのランチェスター戦略、丸亀製麺のプロモーション戦略あたりのお話が面白かったですョ。

<営業理論と実務>
商売をやっている身からすると、この様な営業理論を直ぐにでも活用したいところですが、残念ながら、これを活用してダイレクトに明日の売り上げ増加に結び付けるのは難しい事です。
そのため、人によっては、机上の理論は何の役にも立たない、とおっしゃる方も居ます。自分の商売ですから、自分で考え、行動を起こさない事には売上など増加するはずがありません。でもその時、こういったセオリーを知った上で行動に少し変化を付けると、成果は変わってくるかもしれませんヨ。

(静岡市立御幸町図書館所蔵)






  


Posted by 書架の番人 at 19:41営業・販売

2016年12月10日

ブラック企業に勤めております。

ブラック企業に勤めております。
要 はる 著

ブラック企業に勤めております。



<ブラック企業>
世の中、法令遵守やコンプライアンスを重視する風潮ではありますが、ブラック企業はなかなか無くなりません。
対顧客に対してブラックなのか、従業員に対してブラックなのか、色々な方向性があるようです。中でも昨今話題になっているのは対従業員に対してブラックな企業です。「自爆営業」なども時々話題になりますし、過酷な労働条件が問題となるケースもあります。某超大手広告代理店の報道は誰もが知るところでしょう。


<判断基準には個人差も?>
明らかに法令違反をしているケースは論外ですが、そうでなくとも「ブラック」と言われるケースはあります。
営業にはっぱをかけすぎたり、人材育成に熱意を注ぎすぎると、受け手から見ると「我が社はブラック」と言われかねません。私の知っている昭和の時代では、「就業時間中は仕事をする時間、仕事を覚えるなら他の時間でやれ」とか「明日の仕事の準備は自宅でしてこい」などと言われたものです。(それが良いとは思っていませんョ)上司や先輩からは罵倒されるのが当たり前、作った書類は引き裂かれる事もめずらしくはありませんでした。今だったら「OUT」ですね。

でも、そんな経験をした私でも思うのです。上膳据え膳で仕事を教えてもらおうというのは違うのではないか。仕事のノウハウはある程度のハングリー精神を持って掴み取るものだ・・・・・・私もブラックでしょうか。


<猛烈社員を日本から一掃する>
某国の首相のお言葉です。労働を平準化することで雇用を生み出そうという狙いは理解できますが、個人的には少し悲しい気持ちになりました。従業員に「猛烈社員」を強要してはいけませんが、中には猛烈に働きたい人も居るのです。あるいは性格上、中途半端が許せなくて気付けば猛烈社員的に働いてしまう人も居るのです。どうかそういう人まで「一掃」しないでいただきたい。・・・・私はブラックでしょうか?


<ブラック企業だけど・・・憎めない面々>
すみません、久々の投稿で関係ない事を書き過ぎましたね。本書の株式会社B社のK支店は小規模な地域広告を取り扱う会社。朝から支店長の怒声が響きます。従業員も超個性的な面々。そんな所へ25歳の佐倉夏美(主人公)さんは半年前に事務員として入社しました。
冴えない一般的な女性事務員という設定で物語ははじまりますが、彼女、なかなかの凄腕事務員です。顧客からのクレーム、営業マンのミス、社内不正・・・発生する問題を次々にねじ伏せていき、読み手に爽快感すら感じさせます。
本の題名は「ブラック企業に勤めております。」ですが、労使関係や労働問題を取り扱った小説ではありません。

我が事務所にもこんな事務員が一人居てくれたらなぁ・・・

(丸善新静岡セノバ店にて購入)



  


Posted by 書架の番人 at 08:14経営

2016年08月28日

シングルマザーの起業

シングルマザーの起業
藤木悠久治 著




<起業の手続きと資金繰り>
起業時の手続きと資金繰りについて書かれた本です。表題から「シングルマザー」が起業する際の特別な問題点等が書かれているのかと思って本書を選んだのですが、実質的には全く関係ありませんでした。起業時の手続きをさらりと解説、あとは公的金融機関や制度融資を利用した起業時の資金調達のお話しがメインになります。


<商売の「種」が大切>
起業したり、会社を作れば誰でも儲かるのでしょうか。いえいえ、そんな訳はありません。起業や会社設立は魔法では無いので、それによって儲かるかどうかは全くの別問題です。働く職場が見つからないから起業とか、自分の労働条件に合う職場が無いから会社設立などというのは本末転倒です。
しっかりとした商売の「種」を自身が持っていること、儲けを産み出す仕掛けが頭の中で描けている事が「起業」の必須条件だと思います。会社設立とか、開業届けとか制度融資を受ける方法論等はすべて商売の種を具現化するための道具でしかありません。


<結果として「儲かる」のが商売>
親のお金を自身のお金に見せかけて会社設立したり、自己資金を他人へ預け、株主に仕立てて2社目の会社を設立したり、資金繰りに窮した際は金融機関からの融資は返済せず早めに倒産を勧めるといった内容など、賛同しかねる内容もありましたが、これいいよねというフレーズが記載されていたので紹介しておきます。
「他人のためにサービスを提供し、他人を喜ばせることが大切、そして結果的に自分も儲かっているというのが商売なんだよ。」

はい!そうですね。私もそのとおりだと思いますし、自身も常にそうありたいと思っています。

(静岡市立御幸町図書館所蔵)



  


Posted by 書架の番人 at 08:07起業

2016年08月17日

身近な人が亡くなった時の手続きと届出全部

身近な人が亡くなた時の手続きと届出全部
池田陽介 著




<相続のご相談>
最近、相続のご相談で事務所へご来訪くださる方が増えています。
ご相談内容は意外にも「税金」の話では無いケースが多いのです。

①相続手続きとは具体的に何をするのか
②何から着手すれば良いのか
③全体のスケジュールや流れが分からない

というご質問が多いのです。この辺のお話しは「税理士業務」ではありませんのでお金をいただく訳にも参りません。
一通りの概要をお話ししたり、一連の流れがわかるスケジュール表のコピーをお渡ししてお帰りいただいています。


<売れているようですね>
「身近な人が亡くなった時の・・・」という本は数種類販売されているようで、かなり売れているようですね。
それだけ、皆さん不安に思っている方が多いのでしょう。

私も「お客様へのご案内を分かりやすく出来るように」という観点から、書店でいくつかを手に取って、その中でも一番気に入ったものを1冊購入してみました。それがこの本です。


<税理士の実体験>
この本の著者は税理士さんです。これまで何人もの相続税の申告をサポートされた経験がある方ですが、いざ自分の父親が無くなって自身が手続きを行う立場となり、かなりご苦労をされたようです。そんな著者が実体験に基づき、各届出書類を記載見本を掲示しながら解説していますので、とても分かりやすいです。・・・あっそうか、こんな手続きも必要だよね・・・というものもいくつか載っていました。

特殊な本ですので「皆さん買っておきましょう」というつもりはありません。でも、この辺の事に不安をお持ちの方は、一度読んでみると心が落ち着くかもしれません。

(TUTAYAすみや静岡本店にて購入)




  


Posted by 書架の番人 at 20:18その他

2016年07月11日

これは経費で落ちません

これは経費で落ちません ~経理部の森若さん~
青木祐子 著



<経費の可否判断>
「これは経費で落ちません」という題名ですが、実際に経費の可否判断が物語の進行に絡むシーンはありません。残念ながら「経理のお勉強」の一助となるような本ではありません。 経理担当者のOLを主人公にしたライトなタッチの社内小説です。  でも侮る無かれ、意外とこういった小説の1シーンに現実で出くわすこともあるのです。


<経理ウーマンの鏡>
最近どこの企業でもOA化が進み、「伝票起票」「領収書」「経費精算」の仕事を行う経理担当者は少なくなってきましたね。

主人公「森若沙名子」さんは制服を着て、手に黒い腕カバーを付けて仕事をする典型的な経理ウーマンです。
地味な27歳の質素系OLで「経理マン」の鏡のような性格です。(良く見ると実は美人・・・という設定は小説ならではですが・・・)

与えられた仕事は確実にこなす。数字やルールには厳しいが、各部署の問題へ必要以上に踏み込まない。常に冷静沈着で合理的な判断を行い、感情を仕事に持ち込まない。社内の恋愛話や秘密話を聞くと、公平性を諮るためその話題から距離をおきます。彼女自身の私生活も質素で合理的、買い物内容から冷蔵庫の在庫まで無駄がありません。全てに無駄がなさ過ぎて彼氏なし、恋愛経験なしです。
上司のみならず社内の信頼は非常に厚いのですが、ともすると「冷たい人」「怖い人」と言われがちです。


<企業情報が集まる部署>
経理というとどうしても「事務」という性格から地味な部署と位置づけられがちです。
営業第1主義の会社などでは、経理は日陰者となりがちですね。

しかし、会社の「経理情報」は人間の神経系統と同じです。お金が動く全ての取引・行動の情報が経理に集まります。
伝票の1枚1枚は単純なものですが、その担当者は誰か、どこの部署・場所で発生しているか、そして同時期に発生した他の伝票を組み合わせて考えると、映画のワンシーンのようにその場の情景が見えてきます。


<スーパー経理マン>
ただし、これを上手く読み解けるのかどうかは、担当者の経験と資質次第です。主人公の森若さんはこれを自在に読み解くのですね。
それどころか、その裏まで読んで、何があったのか推測し、必要があれば行動に出ます。  格好いいですね! 経理マンはかくありたい!と思います。


<合理的すぎて隙が無い>
若手男性社員から親しくされても、仕事上の利点から自分に近づいてくるのだと思い込んだり、食事に誘われても、自宅の冷蔵庫に保存した食べ物の賞味期限を気にして「無理です」と答える辺り、何とも変わった主人公です。

こんな感じで前半は比較的単調なお話しが続きます。読者としては少し面倒にすら感じるのですが、それが最後に少しだけ「森若」さんの合理性が崩れた時の「ほっこり」した幸せ感を大きなものにしているのでしょう。

娯楽小説ですが、面白かったです。続きが出てくれると嬉しいですね。

(戸田書店静岡本店にて購入)




  


Posted by 書架の番人 at 08:05会計